アリスの娘たち〜  サァラ2


結局、攻め側(?)の"黒のサァラ"が緊張に身を固くし、受け側の"白のサヤカ"が落ち着き払っていては絵にならないということで、
下着も全部とることになった。
何も身に着けていなければ、どっちがどっちかは見分けがつかないだろう、とカメラマンが言ったからだ。
しかし、攻守入れ替わったおかげで、サァラは姉に触れられたり、抱かれたりする嬉しさと恥ずかしさで、余計にぼうっとなってしまった。
秘めた想いを閉じ込める殻に、少しずつヒビが入っていく。


「サァラちゃん、そんな恍惚とした表情しないで。男女が絡んでいるわけじゃないんだからさ。ちゃんと目を開けて、しっかりと相手見つめて!」
カメラマンも当初のイメージとは違う展開に、つい口調が強くなる。
「まぁまぁ。サァラちゃんも慣れないシチュエーションで戸惑うこともあるだろうからさ。
 ここは路線を変更して、男女のように絡み合う双子姉妹なんてのも艶っぽくていいじゃない。
 サヤカちゃん、積極的にサァラちゃんをリードして。サァラちゃんは、お姉さんに全部任せて、流れに逆らわないでね」
編集長が助け舟を出す。しかし本格的にリードされることになったことで、サァラはさらに別の心配をしなくてはならなくなった。
体のあちこちに触れる姉の手の感触や体温に、サァラは心をかき乱され、次第にセックスのような興奮を感じていたからだ。

「はい、じゃサヤカちゃん中腰になって、サァラちゃんを後ろから抱きしめて、
 サァラちゃんは少しおいてから、お姉さんをゆっくりと見上げて、そのままね」
サァラはカメラマンの指示にも上の空だった。
背中をくすぐる姉の髪。
胸に回される姉の腕の感触。
逆に自分の肩に触れる、姉の胸の尖り。
じゅんっ、とした感触を下腹部に感じて、サァラはそれどころではなかったのだ。
サァラは頬を上気させ、潤んだ瞳で虚空を見つめていた。
カメラマンが痺れを切らせる前に、サヤカは妹の頤(おとがい)に指を添えて自分に向かせる。
急に視界に入った姉の顔に、サァラは身をこわばらせる。
妹の瞳に緊張の色をみてとったサヤカは、落ち着かせるつもりで、そうっと唇を重ねた。
鏡に映した似姿を持つ2人の妖艶なシーンに、カメラマンたちからもため息が上がる。


(やわらかい、お姉ちゃんの唇。ボク、お姉ちゃんにキスされてるんだ)
抑えていた感情が瞳から溢れだし、頬をつたう。


「すみません、少し休憩させてください。サァラの体が冷えてしまったわ。毛布を下さらないかしら?」
つうっと余韻を残してキスを終えると、サヤカは妹の体を気遣うように、撮影の中断を申し出た。
「サァラ、しっかりしなさい。濡れてるわよ」
姉に小声で注意されて下を見ると、内股に光るものが見えた。
感じてしまった証拠を見咎められた恥ずかしさで、サァラはうずくまるように身を抱える。
サヤカは受け取った大きな毛布で、妹の体をいたわるように包んだ。
周囲には妹を気遣う優しい姉という光景にしか見えない筈だった。


結局、撮影はそこで終了ということになった。
機材を片付けながら、カメラマンが話しかけてくる。
「おつかれさま、でもサァラちゃんにも意外な面があるんだね。サァラちゃんと寝たことはないけど、ホントはあんなに……」
妹への遠慮のない言葉を、サヤカがさえぎる。
「予定通りの撮影にならなくてごめんなさい。サァラはこのところ体調があまりよくないみたいで、
 今日はもう休ませてあげようかと思ってるんです。」
サァラはいたわるように肩を抱く姉の手を、ぎゅっと握り締めた。


自室へ戻る前に食事を済ませよう、というサヤカの提案で、サァラはまだ人の少ない食堂の片隅の席にすわり、a
姉がカウンターから戻ってくるのを待っていた。
「少しは栄養つけなきゃね。あなた、最近本当に元気が無いから…」
トレイの上は、サァラの好みを完璧に把握したセレクトで飾られていた。
しかし、サァラは下を向いたまま、料理に手を付けられないでいた。
いつもなら、たわいも無い会話とともに食事を進める姉が、黙って食事を続ける。
(やっぱり怒っているだろうな)
サァラは意を決して……しかし、下を向いたまま姉にあやまった。
「お姉ちゃん、今日はゴメンナサイ! でも、ボクは…」
「あんなに"瞳を"濡らしていたら、撮影にはならないものね」
特に怒っている風でもない声に、サァラは顔をあげた。
「お姉ちゃん、ボクはお姉ちゃんが……」
サヤカはすっと腕を伸ばして、開いた妹の口にポテトを差し入れる。
「お話は部屋でもできるわ。冷めない内に食事をすませましょう」
「……うん」
双子の"娘"は周囲の注意を引く。
誰かにサァラの心を聞きとがめられないとも限らないのだ。


食事中、交わされた言葉はひとつも無かったが、サァラは姉の唇の動きをずっと見つめていた。
フォークやナイフを使う姉の指も、いつもより艶めかしく見えた。
「私が食事をしているのを見るのが、そんなに楽しい?」
姉にはすべて見透かされている。
自分の心をどれだけ隠し、ごまかしたとしても無駄だ、とサァラは思った。
(部屋に帰ったらすべてを打ち明けよう。きっとお姉ちゃんが、行き場を失ったボクを助けてくれる)




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